基礎知識編


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1. 鮎の友釣りとは

素朴な疑問編(2)でも解説しているように、鮎は自分の食料確保の場、あるいは生活圏(縄張り)に他の侵入者が入ると、体当たりして追っ払うという習性があります。この習性を利用したのが「鮎の友釣り」で、写真のような仕掛をオトリ鮎に付けて、鮎のいそうな場所に泳がせます。

すると、血気盛んな野鮎は、オトリという侵入者に対して「あっちに行けー」、「出て行けー」と体当たりし、その瞬間にオトリ鮎の尾っぽの後ろに付いている掛け針(イカリ針やヤナギ針)に掛かり、釣り上げられてしまいます。

では、ここのところをコマ送りで解説してみましょう。出演協力は、今年大活躍してくれた疑似オトリの鮎美ちゃん1号と鮎美ちゃん2号です(写真はクリックすると拡大します)。

<写真「オトリ鮎(手前)と野鮎」>
手前のオトリ鮎にハナカンが着けてあり、そこから糸(ハナカン周り仕掛)が尾っぽの方に伸びているのが見えます。これがハナカン周りの仕掛で、ヒレのところでサカバリという小さなハリとハリス止めを一体に付けており、イカリ針という掛け針をセットしておきます。そして、サカバリをヒレに軽く刺して、準備完了。この状態で水中に泳がせている写真です。向こう側に見える鮎が野鮎で、自分の縄張りに入ってきたオトリ鮎に対して、いつ攻撃を仕掛けてやろうかと様子を伺っております。

<写真「掛かる直前」>
一向に縄張りから出て行かないので、とうとう野鮎の怒り爆発。オトリ鮎の後ろにぴったりと付いて、攻撃体制完了。そして、ドーンと下からぶつかります。

<写真「掛かった瞬間」>
体当たりして、クルッと戻った瞬間待ち構えていたのは、オトリ鮎に付いていたイカリ針でした。背中にグサッと刺さった針はいくら暴れて外そうとしても、外れません。そして、水の中を逃げ回った後、引抜きという鮎にとっては初体験の空中遊泳をして、タモの中に吸い込まれてしまいます。

2. 鮎の一生

地方により多少のバラツキがありますが、10月から11月頃、川の下流で生まれた鮎の赤ちゃん(仔魚・・「しぎょ」と言うそうです)は、すぐに海に下ります。いったん沖合いに出た後、岸近くに集まり、動物性プランクトンを食べて来るべき溯上の日に備えます。

春(3月から5月頃)。河口の温度が上がり、全長が5〜7cmに育った稚鮎は河口に集まり、溯上を開始します。そして、溯上を開始すると食性も変わり、石の表面に付着する藻類を削ぎ落とし食べるため、歯は櫛状に変わります。

6月以降、夏の強い日差しで成長する良質の藻類を食べ、鮎も急激に成長し、鮎師の良きターゲットとなります。

9月以降、秋の風が吹き始めると鮎も晩年となり、メスは卵を抱え、オスは白子を持ち、ナーバスになるため、釣りをするにはいちばん難しい時期となります。この時期、オスは徐々に黒ずみザラザラになるため、初期の鮎(若鮎)らしい美しさは無くなります。

10月以降、川を下りはじめ下流域で産卵をしたあと、体力を使い尽くして死んだり、フラフラなって流れにまかせて流下している時に、シラサギなどの餌となり、たった1年という短い一生を終わります。

3. 鮎の漁期

<初期>
6月の解禁から7月初め頃を初期といい、放流河川の鮎もまだ多く、比較的容易に釣ることが出来ます。気候的には梅雨の真っ最中のため、雨の日の釣行が多くなりますので、冷えることも多いですから、十分な装備で釣行することをお薦めします。

私は、ある鮎雑誌で読んだ「ウェットタイツは冷えるので体に悪い」という記事が印象に残り、オーダーのドライタイツ(ウェットタイツのように体にフィットし、しかもドライタイプという水が入ってこないタイプのため、暑くなく寒くなく体にとてもいいようです)をシーズン通して愛用しております。

<盛期>
梅雨が明ける7月中旬から8月中旬が一番鮎釣りに似合うシーズン、盛期です。カンカン照りの真夏の太陽の下、ジリジリした日差しを浴びながら川の中に立ち込み大鮎と引っ張りっこ。鮎釣り師の至福の時です。ベテランは「鮎釣りやってて良かった」とつくづく思い、鮎釣りの面白さが分り始めた人は「もっと早く始めれば良かった。」と感じるのはこの時期です。

(写真・清津釣果)
7月下旬、新潟県清津川での釣果です。山に囲まれたきれいな川で、真っ青な空を見ながら1日中鮎釣りが出来るなんて、至福以外のなにものでもありません。「家族をほったらかしにして、自分だけこんな幸せな1日を過ごすなんて申し訳ない」と少しは思いながらも、毎週幸せな週末を過ごしております。

(3) 後期
・ 産卵に向け、抱卵を始める時期で、この頃極端に追いが悪くなります。1週間前はバタバタと入掛りがあったのに、まったく追わない。ということがある時期ですので、ポイントをじっくり攻めるよう、釣り方を変えていく必要があります。また、神経質になった野鮎を散らさないように、ポイントアプローチはそれまで以上に静かに、細心の注意をはらいたいですね。

4. どんな川で釣れるのか

鮎の餌は石に付着する藻類なので、川底が泥や砂などの場所は適しません。水のきれいな、大きな石がゴロゴロしているような川で、しかも漁協が管理して鮎を放流していれば、鮎の釣り場となります。地方の場合、海から山が近く、名も無いような小河川でも、天然モノが多く遡上しているので、大釣りが出来る可能性があります。

5. 関東近郊の釣り場

関東近郊は内陸の河川が多いため、一部の海に近い河川を除いて、放流モノが中心となります。今年のように天然溯上があまり良くない場合、放流河川の方が魚影が濃く、放流河川に釣行した方が良い結果が出る事もあります。下の表は私のよく行く河川とその特徴です。

場所 河川名 例年の解禁 特徴
東京都 秋川 6月の2週目 放流が多く、初心者向きの釣り場、大混雑
東京都 奥多摩川 6月の3週目 大場所なので、ポイントをよく吟味して
神奈川県 酒匂川 6月1日 天然溯上があり、放流も多い
神奈川県 中津川 6月1日 最近溯上が無くなり魅力低下、しかし意外と大型が釣れる
山梨県 釜無川 6月下旬 良く釣れるので大好きな川の一つ
静岡県 興津川 5月20日 天然溯上あり、抜群にきれい。アユも上等で大好きな川
静岡県 狩野川 5月下旬 溯上が少なくなったが、やはり天下の狩野川。毎年終盤になると通い出す
静岡県 河津川 6月の1週目 数年前までは、抜群に面白い川だったが最近は良い話を聞かない
新潟県 清津川 7月上旬 山の中の川で水質とロケーション最高。良く釣れて、人気急上昇中。意外と近い


6. 解禁日の釣り

解禁日の釣り方は「良い場所に入り、じっくりと釣る」と、これに尽きると思います。大混雑になるため、場所移動したくてもできないというのが実情ですが、放流河川の解禁日はたいていどこにも鮎はいるので、そわそわと落着かない釣りをしていたら数は伸びません。

私の地元「秋川」の解禁日は、良い場所は前日の朝にはテントが張られます。そして、グループで一晩中解禁のお祝いを河原でやり、午前4時頃,少し明るくなり始めると竿を出します。条件のいい時であれば、すぐに掛かりますが、本当は完全に明るくなってからの方が、無用な仕掛トラブルを起こすことも無く、無難です。

そして9時頃になると、どこの家庭でも、奥さんがご主人のために、朝ご飯を川に持ってきて一緒に食事をするという、ほほえましい光景がいたるところで見られます。このように、年中行事としての鮎解禁が地域に昔から根差しております。

(写真・解禁日翌日)
今年の秋川解禁日の翌日早朝。前日のどしゃ降り、泥濁り、低水温がウソのように、朝からカラッと晴れ、良く釣れて最高の日だったようです。

7. 初期の釣り

解禁から1週間は、まだ解禁と同じようによく釣れます。この時期、平日に釣行できれば、釣り人も少ないため、とても面白い釣りとなります。これから鮎釣りを始めようとする初心者には一番いい時期です。一ケ所で粘るのではなく、釣れなくなったら別のポイントに移動するようにした方が良いでしょう。

その後の数週間は、解禁当初のような喧燥はなくなりますが、土日だけは大混雑します。しかし、釣果のほうは徐々に少なくなります。

(写真・小和田堰下6月20日)
秋川、小和田の堰下流。6月20日の午後6時過ぎというのに、こんなにいっぱい釣り人が残っています。

8. 盛期の釣り

解禁から1ヶ月ほど経過し、真夏の日差しが出る頃、放流鮎もかなり間引かれ、個体数が少なくなるため、残った鮎は急激に成長します。放流鮎も鮎本来の闘争心が強くなり、また天然溯上鮎も同様に縄張り意識が強くなるので、大釣りができるもっとも鮎釣りらしいシーズンです。

また、解禁の遅い地方も7月中旬にはすべて解禁するため、釣り人が各地に分散し、解禁当初のような混雑は無くなり、初心者にとっても良い時期となります。ただ、解禁当初のように、オトリをポイントに入れたとたんに掛かるようなことは少なくなるため、丹念に泳がせる事が重要なポイントになります。

「丹念に泳がせる」と一口に言っても、具体的にはどうすればいいのでしょうか?基本的には細糸で自由に泳がせる。自由に泳がせて釣れなければ、ポイント毎に止めて泳がせます。
泳ぎすぎる場合は竿を立て、糸を張り、オトリの動きを止めれば良いので、オトリが弱った時の事を考え極力細糸にした方が良いと思います。

私はハイテクラインのターボVをメインに使っており、シーズンを通して0.03〜0.07の極細ラインを多用し、水量と掛る鮎のサイズにより0.1号程度のターボVを使い分けております。

(写真・興津の鮎)
静岡県、興津川の8月の鮎。天然遡上らしいスリムだがヌルの多い上等の鮎で、掛かった瞬間目印を2,3mぶっ飛ばす元気一杯の鮎です。

9.終期の釣り

9月以降の終期になると、ほとんどの放流河川は鮎が釣り切られてしまうため、釣行の場はもっぱら天然溯上の河川になります。関東近郊であれば、酒匂川、狩野川、興津川などの溯上のある川。酒匂川以外は11月まで。そして、すこし足を延ばして新潟方面なら9月いっぱい、まだまだ楽しめます。

この時期は鮎の数も少なくなっていますので、釣れそうな場所があったらそこでじっくりと粘ります。初期のようにチョコマカ動いても場所を荒らすだけなので、じっくりと腰を据えた方がいいでしょう。

数年前までは、この時期でも40〜50匹位釣れたことがありますが、最近、特に今年は条件が悪かったので、2桁釣るのは苦労しました。

(写真・小和田堰下9月6日)
台風で流れが大きく変わりました。全体的にジャリが多く、来年が心配です。そして、この時期になると、鮎釣りの人はほとんどいません。

10.禁猟
どこの河川も魚族保護・産卵床の保護などのために禁猟を設けています。新潟の川などは鮭が上ってくるため禁猟になる川もありますので、釣行前には必ず確認して、釣りをしても良いのかを漁協等に確認してください。

私のよく行く神奈川県の河川のように、「すべて6月1日解禁で10月15日禁猟」と一律に決めている県もあります。神奈川県に釣行される方は覚えておいた方が良いですね。


オトリ鮎と野鮎

掛かる直前

掛かった瞬間

清津釣果

解禁翌日

小和田堰下6月20日

興津の鮎

小和田堰下9月6日


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